【相談の現場から】ご存じですか?職場の「ワクハラ」
投稿日:2021.09.13
放置するとパワハラ問題に!接種しない人への強制や差別は許されません。
『ワクハラ』とは、「ワクチンハラスメント」の略語です。
新型コロナウイルスのワクチン接種が徐々に進む中、一方で持病やワクチンへの不安などから「様子を見たい」「接種したくない」という人もいます。接種の判断は個人に委ねられていますが、一部で接種しない人たちを否定するような事態も起きています。
いわゆる「ワクチンハラスメント(ワクハラ)」は、ワクチンを接種しない人が、職場内で「なぜワクチンを接種しないのか」や「ワクチン接種をしないならば出勤させない」、「別室で隔離をして業務をさせる」等、ワクチン接種を強要されたり不当な扱いを受けたりする事をいいます。法律上の定義などが存在しない造語ですが、このワクハラが、パワハラにつながる危険性があります。
ワクチン接種は強制ではありません。それにもかかわらず、受けていない人に、職場で不利益が生じているケースがみられます。会社はどう対応すべきなのでしょうか。
厚生労働省のホームページには、次のように記載されています。
「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをしたりすることのないようお願いしています。
仮に会社等で接種を求められても、ご本人が望まない場合には、接種しないことを選択することができます。」
<厚生労働省ホームページ 関連リンク>
○新型コロナワクチンの接種を望まない場合、受けなくてもよいですか。
○今回のワクチン接種の「努力義務」とは何ですか。
例えば、ワクチンを接種していない社員Aさんについて、
他の社員から「Aさんがコロナになったら仕事に支障が出る」「Aさんがお客さんにコロナをうつしたらどうするのか」といった声が寄せられ、「ワクチンを打つか、退職するか」と退職勧奨にまで発展するという会社が誤った対応をとる可能性もあります。(実際、兵庫労働局において、従業員がワクチン接種を断ったところ、勤務先から自己都合退職届の書類にサインするよう迫られたという事案も報道されています。)
フクシマ事務所でも、社員間でワクチン接種やPCR検査等の受検について意見の相違がありトラブルになりかねないというご相談が増えています。
<厚生労働省ホームページ 関連リンク>
〇新型コロナウイルスワクチン接種が、地域・職域で進んでいます。一方でワクチン接種を受けていない人に対する偏見・差別事例があるとも聞きます。 私たちは、どういった点に注意して行動すべきなのでしょうか?
ワクハラが横行してしまう理由には、「ワクチンを打ったからもう大丈夫」という誤った認識を持っている人が少なからず存在しているということも挙げられるでしょう。
ワクチンを打つことで発症や重症化を予防する効果は期待できるといわれていますが、ワクチン接種が完了した後、その効果で発症はしなくても、ウイルスを持っていて、他人に感染させてしまう可能性は否定できません。
しかし、場合によっては転勤が可能なケースも考えられます。
例えば、きわめて重要度の高い業務に従事しており、長期離脱がどうしても許されないような場合であれば、当該業務に従事するにはワクチン接種が条件ということもありえます。そこで、ワクチンを拒否した場合には配置転換も正当であると判断される可能性がありますし、状況に応じて転勤が伴う異動もありえます。「配置転換=労働条件の低下」が当たり前に認められるものではないので注意が必要です。
繰り返しになりますが、新型コロナワクチンの接種は強制ではなく、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。
職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていないことを理由に、職場において解雇、退職勧奨、いじめなどの差別的な扱いをすることは許されません。
接種には本人の同意が必要であることや、医学的な事由により接種を受けられない人もいることを念頭に置いて対応しましょう。
また、過去に新型コロナウイルスに感染したことを理由として、人格を否定するような言動を行うこと、一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし職場で孤立させること等も、職場におけるパワーハラスメントに該当する場合があります。
職場におけるパワーハラスメントに関しては、改正労働施策総合推進法により、その防止のために事業主において雇用管理上の措置を講じることが求められています。(中小事業主は令和4年4月1日から義務化)
職場でのハラスメントやトラブルを予防することは、事業主の責務であり、近年その社会的要請は高まり続けています。
パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動には十分注意を払うよう心がけましょう。
職場トラブルやハラスメント問題、それらの防止策等はお気軽に当法人担当者へご相談ください。