【11月の給与計算メモ】賞与の社会保険料控除

今月の給与計算メモは、賞与の社会保険料控除の取り扱いについて取り上げます。

例年の処理となっている企業様がほとんどだとは思いますが、人事異動や保険料率の改定などで注意が必要な場合もあります。
年末調整の準備と合わせて、給与計算ソフト等のマスタの整備、規程の確認等もしておきましょう。

賞与は、給与とは異なり、法的な制限はなく、それぞれの会社が任意に定め、支給するものです。
一般的には、夏と冬に2回支給されることが多く、そのほかに決算時に決算賞与を支給する会社もあります。
法的な制限がないので、就業規則や賃金規程にどのように規定されているかが重要になります。
慣行で処理され、規程等が整備されていない場合は、(任意ではありますが)トラブル予防のため、

  • 賞与を支給するのか、しないのか、しないことがあるのか
  • 賞与支給の目的(会社の利益還元、業績評価、生活給など)
  • 支給額を決定する基準
  • 算定対象期間
  • 支給対象者
  • 支給額
  • 支給日

などを規定しておくことをおすすめします。

支給日、支給対象者、支給額が決まったら、社会保険料、所得税の控除額等の計算を行います。
40歳以上65歳未満の健康保険被保険者に関しては、「介護保険料」も控除します。
それらの額を差し引いた額が、賞与の手取り金額となります。

社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)の計算方法

標準賞与額 × 保険料率

標準賞与額とは、実際の税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたもので、健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限となります。
標準賞与額のもととなる賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるもののうち年3回以下の支給のものをいいます。なお、年4回以上支給されるものは、標準報酬月額の対象となります。また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は対象外です。

賞与となるもの (例) 賞与(役員賞与を含む)
ボーナス
期末手当
決算手当
年末手当
夏(冬)季手当
繁忙手当
勤勉手当
寒冷地手当
越年手当
もち代
年末一時金
自社製品(現物)
賞与とならないもの(臨時で支払われるが、労務の対償でないもの)(例) 災害見舞金
結婚祝金
出産祝金
解雇予告手当
退職手当

日本年金機構ホームページ<厚生年金保険の保険料>
協会けんぽホームページ<賞与の範囲>

40歳等の年齢到達、退職、育休開始・復帰等に注意が必要

社会保険料は、賞与支給日ではなく賞与支給月を基準に算定しますので、控除を行う際には40歳・65歳年齢到達(介護保険料)、退職(資格喪失)、育休開始・復帰等に注意が必要です。

40歳到達

介護保険料は「満40歳に達したとき」より徴収が始まります。
「満40歳に達したとき」とは40歳の誕生日の前日のことであり、その日が属する月から介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料が徴収されます。

例:1月2日生まれの方が40歳になる場合

誕生日の前日(介護保険の第2号被保険者の資格取得日)は1月1日のため、誕生日の前日が属する月である1月分より健康保険料とともに介護保険料が徴収されます。
※1月3日から1月31日生まれの方も同様です。

例:1月1日生まれの方が40歳になる場合(誕生日が1日生まれの方はご注意ください)

誕生日の前日(介護保険の第2号被保険者の資格取得日)は12月31日のため、誕生日の前日が属する月である12月分より健康保険料とともに介護保険料が徴収されます。

したがって、賞与支給日が12月1日の場合、翌1月1日生まれで40歳になる方の介護保険料の徴収が必要となります。

65歳到達

介護保険料は「満65歳に達したとき」より徴収されなくなります。
「満65歳に達したとき」とは、65歳の誕生日の前日のことであり、その日が属する月から介護保険の第2号被保険者ではなくなり、介護保険料が徴収されなくなります。
ただし、65歳以降は介護保険の第1号被保険者となり、お住まいの市区町村より介護保険料が徴収されることとなります。

例:1月2日生まれの方が65歳になる場合

誕生日前日(介護保険の第2号被保険者の資格喪失日)は1月1日のため、誕生日の前日が属する月である1月分より介護保険料が徴収されなくなります。
※1月3日から1月31日生まれの方も同様です。

例:1月1日生まれの方が65歳になる場合(誕生日が1日生まれの方はご注意ください)

誕生日の前日(介護保険の第2号被保険者の資格喪失日)は12月31日のため、誕生日の前日が属する月である12月分より介護保険料が徴収されなくなります。

したがって、賞与支給日が12月1日の場合、翌1月1日生まれで65歳になる方の介護保険料の徴収は必要なくなります。

賞与支給月に退職(資格喪失)する場合

従業員が負担する保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで発生しますので、退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません。

賞与支給後に退職が決まったような場合は、すでに支給した賞与について社会保険料が過控除となってしまうケースがありますので注意しましょう。

賞与支給月に育休開始・復帰する場合

育児休業期間について、保険料負担が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。

例:12月31日から育児休業を開始する場合

12月分より免除となりますので、賞与支給日が12月1日でも控除の必要はありません。

例:11月30日に育児休業が終了(職場復帰が12月1日)した場合

11月分まで免除となりますので、賞与支給日が12月1日の場合は控除する必要があります。

例:12月1日に育児休業が終了(職場復帰が12月2日)した場合

11月分まで免除となりますので、賞与支給日が12月1日の場合は控除する必要があります。

日本年金機構へ提出した「育児休業等取得者申出書」や各種通知書、社内様式(育児休業申出書等)などをきちんと確認して、間違いのないよう控除額の計算を行いましょう。
なお、法改正により、令和4年10月より育児休業期間の保険料免除については取扱いが変わります。ご注意ください。

その他、賞与支給規程、賞与支払届等社会保険の各種手続き、給与計算、育児介護休業についてのご相談はお気軽に当法人担当者へお寄せください。

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