【法改正】正規雇用労働者の「中途採用比率の公表」義務化
投稿日:2021.09.29
令和3年4月1日から、常時雇用する労働者数が301人以上の企業において、正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されました。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)及び
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号)
始まったばかりの制度で対応に戸惑う企業もあるようです。あらためてポイントを確認しておきましょう。
趣旨・目的
労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的とする、とされています。
大企業には新卒一括採用という日本型の採用制度を採用しているケースが多いため、中途採用の比率が少ない実態があります。大企業が中途採用比率を公表すれば、それに続き他の企業も中途採用の比率を意識するようになり、そのことで中途採用や経験者採用の拡大が期待されます。これにより、育児・介護、治療中の人たちや就職氷河期世代等、新卒以外の多様な人材の雇用確保に繋げるというのが国の狙いです。
概要
常時雇用する労働者※1が301人以上の企業は、求職者が容易に閲覧できるかたちで「直近の3事業年度※2の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用※3比率」を公表することが必要となります。公表は、おおむね年に1回、公表した日を明らかにして、インターネットの利用やその他の方法で行います。
※1 「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず①期間の定めなく雇用されている者、②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者、のいずれかを満たす労働者を指します。
※2 「直近の3事業年度」とは、事業年度における正規雇用労働者の採用活動が終了し、正規雇用による中途採用者の状況を「見える化」することができる状態となった最新の事業年度を含めた3事業年度を指します。
※3 「中途採用」とは「新規学卒等採用者以外」の雇入れを指します。
公表の時期
初回の公表については、法施行(令和3年4月1日)後の最初の事業年度内に、2度目以降は、前回の公表からおおむね1年以内に、可能な限り速やかに行います。
罰則
中途採用比率公表の義務化は、現状では対象企業の努力義務とされています。そのため、未対応でも罰則の規定はありません。ただし今後、違反した企業に対して何らかの罰則規定が定められる可能性もありますので、法律を順守した対応を行いましょう。
公表義務化のメリット・デメリット
企業
メリット
- 求職者に中途採用に対する積極性をアピールできる
- 求職者の応募を集めやすくなる
- 求職者とのマッチング精度が高くなる など
デメリット
- 比率公表に対する効果が未知数であり、コストをかけづらい
- 中途採用比率の数値が低い場合、伝統的な年功序列の社風と見なされる可能性がある
求職者
メリット
- 転職時に企業体質を比較しやすくなる
- 転職時に可能性・チャンスを見極めるのに役立つ
- 今後のキャリアを考える上で役立つ など
デメリット
- 転職市場が活性化されると、スキルやアピールポイントがある人ほど有利な状況になる
まとめ
中途採用比率の公表義務化の対象企業は、年1回の公表を行うことが必要です。現状では違反に対する罰則はありませんが、今後新たに規定される可能性を考えると、今から適切な管理と実施をしておくことが求められるでしょう。中途採用比率の公表には、単に数値を公表するだけでなく、中途採用市場を活性化させ、人々の働き方の柔軟性を上げていく狙いもあります。
また、中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大を図る事業主には、助成金が受けられる場合があります。
人口の減少も進み、中途採用市場が活性化する近い将来を見据え、300人以下の企業も、自社の採用戦略等を検討してみてはいかがでしょうか。
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